近畿大学工業高等専門学校


TOEIC815点を12か月で取得する勉強法

 

先日の本欄でお知らせしたように、本校の4年情報コミュニケーションコースの学生、赤崎智君が、1月のTOEICで815点を取得した。その1か月前の12月に初めて受けたTOEICでは730点であった。その記事の中で、勉強法について、「当たり前のことを当たり前として行った」と述べ、具体的な方法については言及しなかった。そのため、読まれた方の中には、「当たり前」の勉強法とは何かを知りたいと思われた方がおられただろう。それで再度、赤崎君に職員室に来てもらい、学習法について詳細に語ってもらった。彼によると、TOEICを目指した勉強を始めたのは、昨年の2月であり、815点を取得するまで、わずか12か月しか要していないことになる。以下に彼の勉強法、教材を記述して、これから受験する方の参考になればと思う。なお、書名と出版社については正確を期しているつもりだが、読者におかれても、インターネット検索するなど確認をお願いしたい。
 
2012年2月から5月
ほとんど毎日30分間、読解学習を行う。中学校3年から高校1年程度の教材を使用。「速読英単語 入門編」(Z会出版)という教材。 
 
5月から7月
週に2回から3回。1日につき、1時間ぐらい学習した。文法学習のため「英文読解入門 基本はここだ」(代々木ライブラリー)という教材を用いた。全編にわたり、3,4回目を通した。それと並行して、単語学習書「DUO3.0」(アイシービー)を使用。家庭ではその本を読み、単語学習を行った。通学時にその内容を録音したCDを聞いた。毎日30分から40分である。
 
7月から10月
読解練習をおこなった。「速読英単語 必修編」(Z会出版)を使用した。毎日、30分の学習であった。文の頭から、後戻りせず、英文を読む方法を実践した。これがよかったと思う。「DUO3.0」も合わせて学習した。
 
10月から2月(試験後も)
毎日、1時間の学習を行った。「新TOEIC TEST 出る単特急 金のフレーズ」(朝日新聞出版)を使用した。日本語から英単語を考えるので、英語のアウトプットの練習になると思う。普通の本だと英語を日本語に訳しているが、この本はその逆の作業を求めている。そのため画期的な単語本だと思う。
 
11月から12月
「1駅1題 新TOEIC TEST文法特急」(朝日新聞出版)を使用した。毎日、1時間の学習であった。11月に3週間、学習した。そのあとは12月の試験の前だけ学習。11月から試験前までにはTOEICの模試を学習。「TOEICテスト新公式問題集〈Vol.4〉」(国際ビジネスコミュニケーション協会)を使用して、模試の形式で1回目の範囲を学習した。毎日1時間以上学習した。リスニングの箇所については、オーディオプレーヤーに入れて、シャドーイングを行った。シャドーイングでは、本を見ないで、再生した音声を即座に追随して、まねて発音した。またシンクロ・リーディングも行ったが、その時には、本を見ながら、再生している音声と同時にまねて発音した。したがってシャドーイングの方が難しかった。これでリスニングの力が付いたと思う。
 
12月の試験が終わってから2013年1月の試験まで
模試の2回目の範囲を学習した。さらに、「新TOEIC TEST読解特急2 スピード強化編」(朝日新聞出版)と「新TOEIC TEST文法特急2 急所アタック編」(朝日新聞出版)を学習した。TOEICテスト新公式問題集〈Vol.5〉」(国際ビジネスコミュニケーション協会)の学習も行った。毎日1時間から2時間学習。特にシャドーイングとシンクロ・リーディングを行った。

 

赤崎君の学習で特によかったと思われるのが、リスニング学習でシャドーイングやシンクロ・リーディングを行ったことだ。この手法についてはインターネットでも多くの実践例が報告されている。リーディングで効果的と思われるのは、英文の最初から、書かれている単語や句を理解しようとしたことだ。文の後の方から前に戻って理解しようとすることを避けている。これは速読につながったと思われる。単語については、上述の単語学習書を使用して、語彙力を向上させている。また、文法については、文法の参考書で学習するだけでなく、問題練習で実践的な文法力を身につけている。
 
彼が、12か月でTOEIC815点を取得した背景には、その能力もあるが、TOEICの特性を認識し、最短の学習法を実践したことにあるように思える。例えるなら、彼は風向きや潮の流れを読むヨットマンのように、心の中で帆を張り、常に効果的な方法での前進を心がけた。学習の方向性は、だれでも迷いやすいものだ。濃い霧がたちこめ、視界を遮るかもしれない。しかし彼は、進むべき方向を、手に握りしめたコンパスで判断していた。当然だが、すべての人が似たような勉強法でも、同じ成績を同じ期間で取れるとは思えない。たとえそうであっても、ここに記述した学習法は示唆に富むものと思う。
 
彼にとって、自宅学習は確かに1時間から2時間までと長くはなかったが、通学時間や隙間的な時間を活用して英語学習したという。そこに熱意が感じられる。高専の学生ということで、情報処理関係の科目や数学を勉強しなくてはいけないので、限られた時間に集中して取り組んだと推測することができる。彼もこの1年が、大変濃密な時間だったと打ち明けている。
 
他のTOEIC学習者に参考になる情報を提供することが出来ればと思い、約1時間半にわたって、彼から学習法を聞いた。彼はその一つ一つに丹念に答えてくれた。彼は話し終えると、丁寧にあいさつをして、職員室を出た。そして可能性という未来に向かって確かな一歩を踏み出した。実際、彼は次の目標を立て、それを達成すべく努力しているという。このような努力を継続することで、心に誓った約束の地へ、やがてたどり着くことだろう。
 
この冬は例年以上に寒い日が続いた。しかし彼が学習法について語ってくれた日は、やっと長い冬が終わり、春の日差しが感じられる日であった。頬を撫でる風は暖かく、次の高みへと向かう彼の背中をやさしく後押ししているように感じられた。