平成24年1月
新年の挨拶
校長 神野 稔
明けましておめでとうございます。
昨年を振り返りますと、3月の東日本大震災の巨大津波と福島原発事故、9月の紀伊半島を襲った12号・15号台風、自然の恐ろしさを見せ付けられた思いです。
日本の台風・震災・原発への対策は磐石と思われていましたが、自然の猛威には科学技術力も太刀打ちできないことを思い知らされました。
人間の科学技術は、環境自然との共存・共生でしか成り立たないもので、台風や震災を予測し、如何に逃れるか、被害を緩和させるか、復興を如何にするかと言うところで存立するものかと思います。
科学技術の発展が生産力を高め、人間生活を豊かにしてきと言えますが、環境破壊や地球温暖化などを進めてきた元凶でもあります。
科学技術を扱う者は、地球環境との共存を旨として、人間的幸せの追求に取り組んでいかなくてはならないと言えます。
今後の震災・防災・原発対策についは、科学技術力の英知を集めた磐石な防衛体制づくりを求めるとともに、甚大な震災が起こらないことを祈念する次第です。
さて、本校は熊野から名張へ昨年4月に移転してきましたが、本校の存続問題は、高専制度の存続問題とも絡みあって重要なところにあったと言えます。
19年度の中教審において、財政改革の視点から高専の存続問題が取り上げられましたが、高専卒業生が日本の工業技術の発展に貢献していると見做され、存続の方向性が確認されましたが、高専卒業生の大学進学者(編入学)が6割を超える状況など、十分に議論が進んでいるとは言えません。
国立高専はスーパー高専の設置や再編高度化を目指し、優秀学生の確保による日本のイノベーションを担う人材を育成することに力を置かれています。
そのことにより、多くの国立高専が進学校と位置づけられており、大学進学比率が80%台に及ぶ高専も出てきています。
昭和37年、高度経済成長期、産業界の要請で生まれた高専は、工業高校3年と工学部4年の専門教育を5年一貫でマスターするという制度で、学校間の関係で行くと中学卒業生が高専1年入学、高校卒業生が高専4年編入生、高専3年修了生が大学1年新入学、高専5年卒業生は専攻科1年に入学か大学3年編入学と6334制の学校制度と複合的な関係となっています。
国立高専の多くにおいて再編高度化が進み、東大・京大・阪大・名大等々国立大への進学が圧倒的となり、進学校として塾・中学校進路担当から高く評価されるようになって来ていますが、高専はもともと7年を5年で専門教育を行う教育機関であるため、大学3~4年の履修科目と高専で履修してきた科目が重複しているため、大学3~4年での不足科目は語学科目や教養系科目だけと言えるため、非効率な教育のやり直しが行われていると言えます。
高専7年で高校3年・工学部4年の教育がやられているのですから、飛び級で大学院への入学が連続的教育の継続と言えるかもしれません。
高専卒業生の語学力不足が指摘されていますが、高専を6~7年制にして、教養教育も充実すればよいのかもしれません。
現状の大学進学中継ぎ学校にしておいては、高専高度化再編も社会的要請に対応できないものとなりかねません。
高専を、創造的実践的技術者養成のために再編活性化するというなら、高専4~5年、専攻科1~2年の教育に長期インターンシップを大幅に導入し、即戦力としての科学技術力もった卒業生を企業に、一部は大学院に送り出すべきでしょう。
当面、本校の進学対策については、学習教育部を復活し、教養科目・専門科目の進学教育を充実させ、近畿大学はもちろんのこと有名大学へ入学させなくてはならないでしょう。
本校は、大学本部に1時間強で移動できる名張に移転してきたのですから、近畿大学との連携を強化することによって、高度化再編問題の解決に結びつけて行かねばなりません。
高専が単体で高度化再編を実現するには、語学教育の充実と企業と連携したインターンシップの更なる充実にあり、大学進学率の拡大だけでは更なる高専存続問題にぶち当たることは自明です。
近大高専の高度化再編策は、12年度以降の人事給与改革を通しての人事刷新(博士1名から26名に増大)、それを背景にしての専攻科設置で一応基礎はできていると言えます。
今後、地元企業との産官学連携による共同研究事業・長期インターンシップの拡大による実践的教育研究体制の確立を進め、理工学部との施設設備を含む教育研究の連携強化、理工学部大学院「ものづくり専攻」との研究・進学等での連携強化も今後の課題です。
近畿大学との連携強化については、理工学部江藤剛冶教授より知見を得ています。
<近畿大学東大阪キャンパスとの協力>
(1)近畿大学への編入学生を通じた共同研究
理工学部において、編入した3年次にしっかり勉強させ単位を取らせ、4年次の卒論は近畿大学教員と高専教員の共同研究で実施する。
学生は近畿大学の指導教員による毎週のゼミに参加し、指導を受けるとともに、実験等は高専を中心にして行う。
高専教員にとって一番大きい効果は、忙しい教育活動の間にあって、実験等に専念する人材が得られる。これにより高専教員の研究活性を飛躍的に高めることができる。理工学部教員にとっても、高度な機器を使う必要はないが、時間のかかる基礎実験の一部を行ってもらうことができる。
(2)近畿大学大学院に進学する高専からの編入者を介在した共同研究
同じく大学院1年次は講義等を集中的に受講させ、2年次の修士論文の研究を共同で行うという案。
(3)実験設備
高専で研究を行うには実験設備が不十分です。理工学部の共同研究教員が当面使わない計測機器等を期限を切って借り受けると良い。
実験の終わったもの、退職教員の設備等については状態の良いものを移転させていただくと良い。
現在、高専の教員の一人に私の開発した100万枚/秒のビデオカメラを使っていただいています。100万枚/秒のビデオカメラは4台ありますから、1台を高専にお貸しすることができます。
(4)公開講座講師
本部には理工系だけでなく、法文系のほとんどの学部がそろっていますので、幅広い内容を名張の人々に講演していただける。
高専のお二人の先生のご講演も拝聴しました。ロボットと通信技術の話でしたが、簡潔で非常にわかり易い内容でした。良い勉強になりました。先生方の研究開発ポテンシャルの高さが良くわかりました。
(5)共同研究分担者としての外部資金の獲得
高専所属の半導体の専門家を含む共同研究の場合もこの例です。
(6)近畿大学付属研究所分所の誘致
未使用の教室を使って、近畿大学付属研究所の分所を誘致すると良いと思います。
本部(東大阪)は自然環境が悪いが、名張は大阪から十分近い上に環境が良いので研究所分所の誘致は十分ありうる話だと思います。これにより先端科学計測機器の一部を設置することができます。
(7)高専教員が東大阪キャンパスで共同研究
それより、近畿大学の教員を名張に引き入れることを考えるべきです。
江藤教授からの助言は以上のようなものです。
他先生方からも多くの提言や助言を頂いております。
これらについても、機会を見て紹介させていただきます。
昨年4月に熊野より名張に移転し、慣れるのに時間を要しましたが、新参者の本校を地元の皆さんに認知して頂く活動を展開しました。
5月にはポスターセッションによる教員研究紹介(体育館)、7月から12月までに8回行った市民公開講座(1号館大教室)、9月名張民産学官連携協議会設立、12月産総研関西センターと近畿地区7高専との連携協力協定締結を行い、本校と行政、地域企業、商工会議所等各種団体との連携協力への道筋をつけました。
24年度は、地域連携テクノセンターを名張民産学官連携協議会加入組織の名張市・商工会議所・農協などとともに本校に設置を行い、本校及び名張市・地元企業からの研究者配置(専任・非常勤)、研究費や研究機器の充実を行い、名張活性化の拠点としてゆきます(三重大学伊賀研究拠点などの人事・予算などを参考とする。担当部署は「地域連携テクノセンター(仮称)」)。
名張フォーラムを開催し、名張市、商工会議所、農協、企業組合、三重交通ホールディングス、名張市地域づくり協議会、有識者の力を頂いて「名張活性化」の方向性を見出してゆきます(担当部署「企画広報」)。
市民公開講座を継続開催し、伊賀・名張の「知性の府」としての存在を示します。演者は、本校の教員・客員教授・外部評価委員、地元有識者、近畿大学教授とします(担当部署「企画広報」)。
地域の祭典「名張祭」を開催し、地域住民、地域団体などの参加協力を得、広報宣伝を拡充し、地域の青少年、住民がより参加しやすいようにします。
スポーツについては、高専野球部が甲子園初出場を果たし、名張市民と全国高専生の応援のもと、近大高専の名前を全国に馳せます。野球、サッカー、柔道、陸上競技は全国高専大会団体優勝を勝ち取り、三重県高校総体において優勝を目指します。
ロボット技術部は、高専ロボコン近畿地区大会優勝、高専ロボコン全国大会上位入賞を目指します。
エコランカー、ソーラーカーにおいても、全国入賞をめざします。
全国弁論大会においても入賞を目指します。
英語プレゼンテーション大会においては、近畿優勝、全国入賞を目指します。
学生研究は、民産学官の研究課題を取り入れ、地域貢献の研究活動を継続させます。
地域住民への施設開放にも努め、名張陸上競技クラブへの施設提供、図書館の市民利用、食堂の市民利用(11:30~13:30)、つつじヶ丘小学校の遠足等々を継続発展させます。
知徳体、三位一体の教育を堅持し、寮生の規律正しい生活、挨拶のできる教職員学生、教育研究活動の活性化、部活動の奨励などにも努め、「人に愛され、信頼され、尊敬される新時代を担う技術者を育成する」本校の教育目的を具現化するよう努め、未来に夢を持てる近大高専を築いて行く所存です。
皆様のたゆまぬ精進を期待して、新年の挨拶とさせていただきます。
以上